水の事故にご用心をとお知らせしつつ、ふと蘇った記憶をお話しします。
時は遡り4歳の夏。私が父親と兄姉とともに近所のプールに行った時のこと。当時はまだ珍しい流れるプールや、定期的に波が押し寄せるプールなどがあり、たくさんの大人や子どもでにぎわっていた場内。
七色のレーンがそびえ立つ大きなスライダーに初挑戦しようとドキドキしながら階段を登り、最初は姉と一緒に滑りました。そのうち慣れてきたのか一人でも行けると思ったのでしょう。夢中になって何度もスライダーを満喫していた時、ふと気づくとゴロゴロと雷が鳴り、辺りは暗く、雨はザーザー。滑り終えたところの浅いプールにいた私は、一変した景色に驚き、なぜか隠れるように水中に身をひそめたのです。滑り台と同じ七色のプールの底を見ながら必死で潜り続ける謎の行動。恐らく「一人で行ってはいけない。」と父から言われていたのかもしれません。見つかってはいけない後ろめたさが謎の行動につながったのでしょう。息が続かなくなって水面から顔を出して辺りを見ると、さっきまでの人だかりはどこかに消え、どこまでも平らな水面を冷たい雨が打ち付けています。寒くてまた水中に潜ることを何度か繰り返していた時、プールサイドに慌てた様子のお姉さんが見え、次の瞬間にはゴワゴワとした大きなバスタオルにぐるぐる巻きされた記憶が残っています。避難した人でごった返すロッカー室にいた父と兄姉に再会し、この話は後々家族内で語られるエピソードとなったのでした。
半世紀近く経った今、無事に保護されたことに改めてホッとするのと同時に、断片的な記憶にゾッとします。子どもの思いもよらない行動にはくれぐれもお気をつけいただき、ご無事の夏をお祈りしています。