ふじのもり保育園では卒園前に、
タイムカプセルを作ります。
その中には、6年後の自分へのお手紙や、
思い出の写真などを入れます。
ご両親に向けてメッセージを書いたり、
ご両親から6年後のお子様に宛てた
お手紙を入れたりすることもあります。
そして今年も、短い夏休みの合間に、
6年生になった卒園児が集まりました。

6年前にこの子たちを送り出した
浦前先生は、
何日も前から準備を進め、
職員一同楽しみに待っていたのですが…。
とっても無邪気で甘えん坊だった
子どもたちでしたが、
体も心も6年の時を経ました。
当たり前のことですが
「先生抱っこして~」などと
言う子は一人もいないのです。
6年前には大きくなったら?の質問に、
瞳を輝かせてそれぞれの夢を
描いていたはずなのに
「将来の夢は?」と質問しても

「特にない。」
「わからない。」

という答えが続きます。
「ヒーローになりたいって言ってたやん?」
と私がたずねると、
冷めたご様子で
「だってなれるわけないやん。」と即答。
しかしこれは、
悲しんだり凹んだりすることでは
決してありません。

幼児期の子どもが、
プリンセスやヒーロー、
アイドルや漫画の主人公など、憧れの人物
(時には消防車や電車など)になりたい、
なれると思い抱くことを『幼児的万能感』
と言います。
そこから学童期に入って
様々な知識の獲得や経験を重ね、
現実世界が広がっていくことで、
実現不可能な夢であれば
何か別の妥当な夢に
修正していくことが欠かせません。
自分にはどんな将来が選択できるのかと、
自身に向き合い、
現実的な目標を立てる経験を経て、
思春期を脱するときには
妥当な万能感を身につけるのだと
言われています。

文献にはサラっと述べられていますが、
まさに過渡期に立たされた子どもたちは、
葛藤や絶望、悩みや不安を抱えているはずです。
私自身、思春期の頃など
思い出しただけでも
顔を覆いたくなる自分だったように
記憶しています。
そんな中、会いに来てくれたのかと
思うと、それだけで愛おしくて
たまらなくなりました。