新緑のまぶしい爽やかなこの時期、
梅雨が始まるまでの短い間ではありますが、
ふじのもり保育園では「青空給食」と
称して園庭にテーブルを出し、
青い空の下で給食をいただきます。

よく晴れたある日、5歳児クラスが
園庭で楽しそうに給食を食べていました。
キラキラおひさまの下では、
小松菜や人参のその色も、
より鮮やか見えます。
私などは、一層食欲も増し、
おいしくいただけることを嬉しく思うのですが、
野菜が苦手な子どもにとっては、
どうやらそうでもなさそうです。

となりに座った男の子は強敵を目の前にし、
お箸の先を迷わせています。
艶やかに光を放つ「しめじ」が、
彼の口に入ることを夢見て、
器の中で待ち侘びています。
彼の五感や脳内で、
おそらく様々な葛藤を繰り返しながら、
やっとの思いで口に運んだものの、
何ともいえない表情が伺えます。
健気なその表情を見ると、
「もう、無理しなくていいよ」と
声をかけたくなります。
(実際に体調や様子によっては、
必ずしも完食と決めているわけではありません)
でも、彼には秘密兵器がありました。
「スピードアップ」という言葉です。
自ら発するその言葉は、
彼にとってのおまじないかのように
あることを決意させ、
「ごちそうさま」への近道となるのです。
そして、満面の笑みで
「僕、スピードアップして全部食べれた!」と
誇らしげに話してくれるのです。

給食は「有り難くいただく」営みであり、
「食べさせる」行為ではありません。
ここでは、残さずいただけたことも
もちろん褒めるにふさわしいことですが、
自分自身でチャレンジすることを決めて、
その達成に向けて自分なりの方法を見つけ出し、
笑顔でゴールにたどり着けたということが、
何より素晴らしいことだと、胸をうたれました。

その時の彼は、
自己効力感に満ち溢れていたはずです。
「大切に育てたい」と思いました。